「ふしぎな中国」を読んで考える
書籍名 |  :  | ふしぎな中国 |
著作者 |  :  | 近藤 大介 |
出版社 |  :  | 講談社 |
発売日 |  :  | 2022/10 |
ISBN |  :  | 9784065300121 |
だから相手を知っておくべきだと思う (2023/04/29)
メディアにもよく登場し、詳細な中国情報と、独特なオチで楽しませてくれる近藤大介氏の書いた本『ふしぎな中国/近藤大介著』を読んだ。私は、どうしても近い将来、日本と中国はぶつかる可能性が極めて高く、それを回避するためにも相手を知るべきだと思うのだ。この本「ふしぎな中国」では、流行から政治的な内容まで分類ごとに5個程度の単語をテーマとして生の中国情報が解説されるが、私は、この本を平和防衛の観点から考えてみた。
近頃は中国で働く日本人も少なくはないので、中国の文化についても詳しい人が多くなっているのではないかと思う。でも私が中国について考えるとき、どうしても「三国志」に代表されるような戦いの歴史を思い浮かべてしまう。益々複雑になりつつある世界情勢のなかではあるが、この本「ふしぎな中国」はエンターテインメント性の高い、独特のオチも項目ごとに付いている楽しめる本ではある。本の序文には次のようにある。
私は1980年代の終わりから、三十数年にわたって中国ウォッチャーを続けているが、「習近平新時代」のいまほど、中国が読みにくい時代はない。かつ、今後ますます「ふしぎな国」になっていく気がする。そんな中、新語・流行語・隠語は、中国社会の本質を掴む貴重な「生情報」だ。どうぞ気楽に読んで、一端の中国通になっていただきたい。
この本に期待したことでもあるが、読み始めて感じることは、やはり中国との考え方の違いだ。面白いほどに違う。本のある章で、近藤氏は、ビジネスの経験なく中国に飛び込んだという自らのエピソードを次のように記す。
そんな環境下で中国ビジネスの最前線に飛び込んで、数ヵ月も経つと、一つの発見をした。それは「海洋民族」である日本人と「大陸民族」である中国人は、共に黄色人種で、漢字文化圏で、コメを主食とし、いささかの儒教精神を有していることを除けば、他に共通点がほとんどないことだった。「日中は一衣帯水」と言うが、発想や行動様式などは、地球を逆に4万km回ってようやく辿り着くほどの距離感があるのだ。
そんな違いからくる楽しいエピソードがたくさんあるのだが、私が書いておきたいことは、お花畑の日本人とは余りに違う中国人がかつての通州事件のようにぶつかる危険があるのではないかということ、そして近藤氏も指摘する中国で実際に起きていることだ。
中国経済が崩壊するという記事や書籍を何年も前からよく見かけるが、一向に崩壊はせず、脆くも崩れ去った日本のバブルと比べても、一党独裁で、常に競争にさらされている14億の民が住む国は、素晴らしい国なのではないかと思う人も多いはずだ。しかし、近藤氏の次の文章で一党独裁の多岐にわたる危険性と、中国国民が抱く日本のような小国に負けたことの怒りが恐ろしいのである。
2021年7月1日、中国共産党は創建100周年を迎えた。この時の習総書記の重要講話などを聞いていると、その思考は、しごくシンプルである。すなわち、「第一の百年」(1921年7月~2021年7月)は、毛沢東主席が創った。その偉大なる功績を引き継いで、「第二の百年」(2021年7月~) は、自分が創っていくというものだ。どう創るかと言えば、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現させる」。すなわち「アジアの形」を、1840年のアヘン戦争と1894年の日清戦争前に戻すということだ。毛沢東主席は1953年12月16日、党中央委員会の「農業生産合作社の発展に関する決議」において、「共同富裕」という概念を提唱した。
その後、「大躍進」「文化大革命」「天安門事件」など、多大な犠牲の上に今の中国の繁栄がある。そして、また「共同富裕」が提唱されているのだ。一方の日本は、今後、実際の損害が目立ち始めたとき、かつてのようにメディアに煽られ、一気に暴走することはないだろうか。だから、今のうちに相手を知っておくべきだと思うのだ。この本の範疇ではないが、アメリカがアジアから手を引き始めたときに中国とどう向き合って行くのか。本当に中国の覇権の下に生きていくというのだろうか。だから今、考えようと言いたい。