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「日本の没落」を読んで考える

書籍名 : 日本の没落
著作者 : 中野 剛志
出版社 : 幻冬舎
発売日 : 2018/5
ISBN : 9784344985025

稚拙な政府も腑に落ちる (2022/12/30)

成長しない日本は、度重なる増税で、没落への道をまっしぐらといった様相だ。

そこでこの本「日本の没落/著:中野剛志」を読み返してみる。元官僚の中野剛志氏によって書かれた本だ。落語のように話をすすめる中野氏をインターネット動画で見た方も多いだろう。難解な話を流れるような言葉で面白おかしく解説する姿には、誰もが頭の良さを感じずにはいられないであろう。

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Photo:engin akyurt/unsplash

この本は「日本の没落」という題名ではあるが、かつての経済大国日本の没落の理由を考えるような本ではない。約100年前に、ドイツの哲学者オスヴァルト・シュペングラーによって書かれた『西洋の没落』の解釈を通して、私たち日本人がどのように進むべきかについて学べる本である。

シュペングラーは、この「ギリシャ・ローマー中世ー近代」という単線的な進歩史観を根本から否定してみせたのである。それは、第一次世界大戦という、進歩とは逆の終末的な現象を目の当たりにしていた当時の西洋の人々には、強烈な衝撃を与えるものであっただろう。

シュペングラーは、高度な文化には栄枯盛衰があり、勃興(春)ー成長(夏)ー成熟(秋)ー衰退(冬)のような循環があるという。また、西洋中心の単一的な歴史観ではなく、ギリシャ・ローマ文化と、西洋文化とは、別の文化で、その他の文化も含め高度な文化には、栄枯盛衰のパターンがあり、いずれ没落する運命であるという。

ここで重要なのは、シュペングラーが「文化」と「文明」とを明確に使い分けていることである。それは、その有機体的な歴史観と密接不可分な、彼独自の用語法であった。すなわち、一つの「文化」が誕生し、成長した後に、成熟し、固結化する段階に入ると「文明」となる。秋から冬へ、壮年から老年へ向かう「文化」が「文明」である。要するに、文化が没落に向かっている状態が「文明」なのである。したがって、「西洋の没落とは文明の問題にほかならないのである」。

このように記し、西洋文明を解釈する。庶民の視点では疑問でしかない、日々目の前で今起きている様々な事象が、中野氏の千年単位で世界を俯瞰する解釈により腑に落ちる訳である。

シュペングラーは、ギリシャ・ローマ文化を「アポルロン的」魂、西ヨーロッパ・アメリカ文化を「ファウスト的」魂と書く。間違いを恐れずに私の理解しているところを書くと、アポルロン的とは「畏れる」魂で、ファウスト的とは「畏れぬ」魂といったことではないかと思う。その「ファウスト的」西洋文化の現在を「貨幣」の視点で、多くの紙面を割いて解釈する。とくに「信用貨幣論」を基礎とし解釈を進める。

文明の没落期は、貨幣支配時代となる。シュペングラーは、そう予言したのだが、問題は、その支配者たる「貨幣」とは、何を意味するかである。シュペングラーの貨幣観を正確に理解しておかなければ、その予言の暗示するところを知ることはできない。

観光立国とは、世界史において繰り返されてきた没落の光景なのである。

「日本の没落」という本なので、日本についても解釈が展開される。中野氏の解釈により、私の日本に対する見方も随分と変わったように思う。大きな流れの中で俯瞰してみれば、確かに少しだけ西洋文明を真似てみた程度なのではないか。西洋文化の重要な部分は何も学んでいないのだ。この稚拙な政府も腑に落ちる。

私、個人的には日本国家の消滅は避けようがないと考えている。これだけ条件が揃っていれば他に道が無いように思う。なので私たちのやることは滅んだ後にどうするか、今から準備をすることではないかと考えていた。この本「日本の没落」を読んで、何をすればいいのか、新たな視点が加わったような気がする。

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