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「“安倍後”を襲う日本という病―マスコミと警察の劣化、極まれり!」を読んで考える

書籍名 : “安倍後”を襲う日本という病―マスコミと警察の劣化、極まれり!
著作者 : 門田 隆将/結城 豊弘
出版社 : ビジネス社
発売日 : 2022/9
ISBN : 9784828424422

本当に昔はよかったのだろうか (2023/01/09)

この本、『“安倍後”を襲う日本という病―マスコミと警察の劣化、極まれり!/著:門田 隆将、結城 豊弘』は、かつて週刊新潮が巨大な影響力をもっていた時代の名物デスクの門田氏と、「そこまで言って委員会NP」も担当した敏腕プロデューサー結城氏の対談を書籍としている。暗殺された元首相の名前をタイトルに冠された本は、日本の未来を憂う話題から入るが、マスメディアの大物二人の対談は国内メディアの未来を憂う話題を中心に展開し、興味深いエピソードに溢れる。

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peace photo:a.gamo

昔の人たちのような、強いイデオロギーを持つまでのレベルには達していないと思います。確かに僕が会社に入った1980年代中頃、テレビ局にいた先輩たちの中には、ある程度の思想を持っている人もいました。

このように結城氏は語る。ならば今のマスメディアの報道はなぜあんなに偏っているのかとも思うが、確かに今、現場の最前線で活躍されている方たちは、まず“お花畑”があってその先の別なところを見ているようにも思う。私のような庶民レベルでも本当に“お花畑”は多い。

私が「ドリーマー」と呼んでいるのは、右左といった政治思想の問題ではなく、「リアリズムに基づかない空想的平和主義」や「できもしない理想主義」「きれいごとの偽善」に拘泥(こうでい)している人たちのことです。

そう門田氏は語る。この本は、マスメディアで活躍された大物ふたりの対談だけあり、面白いエピソードが多い。しかし、タイトルにある「日本という病」という切り口で、私なりに考えるとメディアの世界だけでなく日本中に「空想的平和主義」は溢れているし、さらに思うこととして「昔は良かった」という、その“昔”も「空想的平和主義」は溢れていたのではないかと思うのだ。

今はネットで地方の番組も見ることができる。せめて、この対談をしている結城氏が担当した「そこまで言って委員会NP」と同程度の番組が関東の地上波でも流れるようになると、少し何かが変わる気はする。

頁数の関係もあるのだろうが、7月8日以降の異様な報道についてもう少し教えて欲しかった。例えばブラジルでは3日間喪に服し、世界中259の国々から弔意が寄せられたのに、なぜ日本だけが弔意どころか、触れたくないかの如く宗教問題へすり替えられていったのか。役人の発表を疑うことさえほとんどない報道はなぜなのか。この本ではイデオロギーに由来すると思われる驚くべき“アベガー”たちの言動については随分と語られていた。しかし、あの異様な空気に覆われた報道は、イデオロギーを持っているとか、いないとかの問題ではないと思う。

業界の大物ふたりの対談は、貴重な話と共に「昔はよかった」という論調が見て取れる。私のような庶民として、「庶民の未来」を憂うものとしては、圧倒的に違うのだ。次の戦争の危機が迫っているということは、たぶん門田氏も結城氏も同じ意見ではないかと思う。でも私が言いたいのは、どうすれば次は負けないかということだ。たかが冷戦後の経済戦争に負けて、GHQがどうの、マッカーサーがどうの、国際金融機関がどうのと泣き言を並べたてる日本人。更に過酷な戦争になったとき勝てる芽は見えない。そもそも「かつては良かった」が私は違うと思うのだ。次に負ければ国が持たない。その時に庶民の痛みは計り知れない。確かにマスコミも、今回の暗殺事件での警察も酷いが、劣化というのとは少し違うと思うのだ。戦後のメディアが辿ってきた歴史を垣間見ることができる興味深い本ではあるが、私には昔に戻ればこの危機を乗り越えられるとは思えないのだ。

最期に、門田氏が語ったことでこれだけは記しておきたい。

河村たかし・名古屋市長が「日本国民に問う! 陛下への侮辱を許すのか!」というプラカードを掲げて、会場前の歩道で座り込みをやったことがありました。その時、NHKは、このプラカードの文言が映らないようにして、座り込みのニュースを報じたほどです。天皇の肖像を焼いたり、頭部を損壊している作品であることをそれまで全く報じていないので、「陛下への侮辱を許すのか!」という文言が視聴者にはわからないわけです。だから、わざわざプラカードの文言を映さずに報じました。ひどかったですね。

本当に酷い話である。しかしこれも決して劣化ではないと思う。戦後一貫して見ないふりをしてきた現実が今表に出てきただけではないかと思うのだ。

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