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「ウイルス学者の責任」を読んで考える

書籍名 : ウイルス学者の責任
著作者 : 宮沢 孝幸
出版社 : PHP研究所
発売日 : 2022/4
ISBN : 9784569851587

100年前から進歩はあったか (2023/05/05)

1989年/photo:ahundt@pixabay

1989/photo:ahundt@pixabay

今から約100年前の1918年に始まり世界中を巻き込んだパンデミックがあった。残念ながらパンデミックは繰り返す。しかし、今回のコロナ禍は、PCR検査や、新型ワクチンなど、今までにない要素があった。巨額のマネーも動いた。一方、ロックダウンで経済的に追い詰められた人々もいた。今回のパンデミック対策について「ウイルス学」の専門家の本を読んでみた。

「ウイルス学者の責任/著:宮沢 孝幸」は、獣医師でウイルス学の専門家である宮沢孝幸氏の「専門家として描いた対策」について「発信の軌跡」が中心に書かれている。

ひどく失望したこともありましたが、それでも私はウイルス学の専門家として、声をあげることをやめてはいけないと考えています。

宮沢氏がこう記すようにメディアでの扱いは酷いものだった。私が最初にメディアで宮沢氏を見たのは、地上波TVの公式動画だった。宮沢氏は、専門家というよりは「風変わりな研究者」といった扱いだった。結果として視聴者自らの生命にかかわることだったと思うのだが、酷いレッテル貼りをするような番組はいかがなものであったのだろうか。

石けんで30秒間洗い流す必要があるのは、サルモネラ菌やO157 (腸管出血性大腸菌)のような細菌です。細菌は生きており、自ら増殖する力を持っていますので、感染を防ぐには全部洗い流さなければいけないこともあるでしょう。1個でも細菌が生きていれば感染することもあります。

Lockdown photo:A.Gamo

Lockdown photo:A.Gamo

自ら増殖するのことのできないウイルスは通常、感染に至るためには100万個程度のウイルスが必要になるそうである。関連死を含めれば1万人が亡くなるインフルエンザより死者の少なかった今回のパンデミックをまるでエボラ出血熱のように扱い、経済に大きなダメージを負うこととなった。結果として自殺者の増加を招くような対策は正しかったのか。勿論、私にはどちらが正解と言うことはできない。でも恐怖を煽る報道に踊らされるだけの庶民が余りに多すぎるのではないかと思うのだ。

日本では、幕末からの他国の侵略との戦いで、明治・大正・昭和と多くの命が散っていった。太平洋戦争の敗戦で、外堀が埋まり、平和ボケしている間に、今、内堀も埋まりつつあるように思う。太平洋戦争末期、竹槍を決戦兵器としたのも、それなりに「専門家」だったわけだ。竹槍では戦闘機が落ちないことは庶民でもわかると思う。余りにも権力者に従順過ぎるのではないか。余りにも非科学的過ぎないか。私はそう思うのである。

正義感の強い人は他にもいました。日赤に逆らうのは大変なリスクを伴いますが、検査に協力してくれる民間病院の医師と大学の教授(医師でもある)がいました。

この本「ウイルス学者の責任」には今回のパンデミックだけでなく、宮沢氏がいままでやってきた専門家としての責任ある活動が記してある。他にも科学好きであれば単純に楽しめるような「レトロウイルス」についての解説、研究者の育成など多岐に渡る内容となっている。

感染拡大当初、日本は被害も少なく、超過死亡は少なくなる状態だったはずだが、なぜか2023年の今、平均寿命が下がるような事態となっている。今後も、本当の専門家である宮沢氏の発信に注目していきたい。

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