「追跡 税金のゆくえ」を読んで考える
書籍名 |  :  | 追跡 税金のゆくえ―ブラックボックスを暴く |
著作者 |  :  | 高橋 祐貴 |
出版社 |  :  | 光文社 |
発売日 |  :  | 2023/2 |
ISBN |  :  | 9784334046491 |
“モリカケ”よりも面白い (2023/08/06)
岸田増税内閣の容赦のない攻勢により、税金に関心を持つ人が、私の周囲でも増えている。私自身も「国の借金1000兆円」という扇動的とも思える報道には、随分と前から疑問を抱いていた。日本人を迫害するかのような、増税やコスト高によるインフレは一体何なんだと思い、何冊か本を読んでみた。その中の一冊が、この本「追跡 税金のゆくえ―ブラックボックスを暴く/著:高橋 祐貴」だ。
この本は、税金の使われ方、特に中抜きの温床としての一般社団法人の闇を教えてくれる。コロナ対策や、2021年に行われたオリンピックでも巨額の税金が注ぎ込まれた。そこで必ず登場するのが一般社団法人なのだ。各省庁はまず一般社団法人へと委託する。そのことによりお金の流れが不透明になっていると著者の高橋氏は教えてくれる。
問題となった一般社団法人は、2000年から08年にかけて行われた「公益法人制度改革」に伴って誕生した歴史の浅い法人形態だ。公益社団法人は内閣府の監督下にあるが、一般社団法人には監督官庁がない。税制優遇を受けながら、公益社団法人のように決算情報などの情報公開のルールが設けられているわけでもなく、法務省でも組織数などの実態は正確に把握できていない。
この一般社団法人を使ったスキームが分かる本である。しかし、この本「追跡 税金のゆくえ」の興味深いところは闇を明かしてくれるところだけではない。
「読者が本当に知りたいことは何だと思う。広告代理店や政府はどうして一般社団法人を介する必要があったのか。ここを徹底的に掘り下げるべきなんじゃないか」ある社会部出身のベテラン記者が、首をかしげて問いかけてくれたこの一言は図星でしかなかった。
著者である毎日新聞の若手敏腕記者の取材日誌物語という側面もある。私が今回読んだ他の税金に関する本は著者の心の動きについてはほとんど触れることはないがこの本はそうではない。
「ネットで検索してもどこにも載っていない一時情報をつかみたい」岡山支局から東京本社経済部に異動して2年目、入社6年目。飲みながら経済部の先輩にそうこぼすことが増えていた。
私共のような庶民には、なかなか新聞記者の知人はいない。ネットを見ていると、新聞記者などのマスメディアに関わる人は途轍もない闇を知っているが、何かに忖度して庶民には伝えられないのだと、つい、陰謀論的に考えてしまう。「えっ本当に知らないんだ」と妙に感心した。
この本の面白い側面は別にしても、コロナ対策など途轍もない予算が流れ出した今、次にどんな増税を打ち出して来るのか。そして本当に使われ方に問題はなかったのか。この本では触れられていないが、反社会勢力に流れた額も少なくないのではないかなど、庶民も調べ、考えるべきであると思う。
この本「追跡 税金のゆくえ」では、他にも農業補助金の問題、各省庁が保有する基金の問題など日本の恥部としか思えない問題も纏めてくれている。扱いは小さいが、マイナンバー保険証やワクチン接種証明書のデジタル化などにも触れられている。
私、個人としては毎日新聞も“モリカケ問題”などばかりを発信し続けることなく、こんな日本の恥部を見直すための報道を是非して欲しいものだと思うばかりだ。
国内だけでなく、海外からもお花畑日本での搾取を狙う者は多いであろう。どんな業界でも思うことではあるが、世界標準のスキームは容赦なく過酷なものだ。日本の内部がこれでは競争に勝てない。日本は江戸時代からほとんど進歩していないのではないかと思う。
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