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「コロナワクチン失敗の本質」を読んで考える

書籍名 : コロナワクチン失敗の本質
著作者 : 宮沢 孝幸/鳥集 徹
出版社 : 宝島社
発売日 : 2022/8
ISBN : 9784299031372

改めて危機を感じる (2023/08/16)

すでにコロナへの危機感も薄れてきた2023年 8月に、改めて何があったのかを自分自身で整理するために、コロナについての本を読んだ。この本「コロナワクチン失敗の本質/著:宮沢 孝幸、鳥集 徹」は、インターネット動画などではお馴染みで獣医の宮沢氏と、医療ジャーナリストの鳥集(とりだまり)氏の対談が、本として纏められている。

日本に限ればトータルでは失敗だったと思います。

ワクチン接種についての宮沢氏のこんな言葉から対談が始まり、鳥集氏も次のように失敗の理由を挙げる。

私が「コロナワクチンは失敗だった」と考えている第一の理由は、政府も専門家も「国民の7~8割が2回接種すれば、集団免疫を獲得できる」と言っていたのに、それを達成できなかったことです。

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Photo by Alexas_Fotos via Unsplash

この本が出版されたのは2022年8月。その後2023年5月に5類へと引き下げになり、私たち庶民はほぼ終息したと感じ始めるわけだが、対談時点までの専門家としての総括ともいえる対話を読むことができる。地上波TVでの情報に満足できず、ネット動画などの情報に触れていた人にとっては一度は聞いたことのある内容ではあるが、みごとに纏めてくれている。

この本は、内容が盛りだくさんで、起ったことの総括的内容だけでなく、人の免疫システム、感染・防御の仕組みについての解説から、今回のパンデミックで専門家が問題点を指摘できなかったメカニズム、更には過去に和解金が発生した事例、今回のパンデミックで見えてきた社会的課題にまで話題が及ぶ。

盛りだくさんなだけでなく、専門家の対談なので当然深い内容で、しかも丁寧に書かれている。例えば、自然免疫と獲得免疫についての話題では、次のように枠外の注釈で解説がなされ、私たち庶民が理解できる範囲で最大限詳しく書かれているように思う。

自然免疫は、体内に侵入した細菌・ウイルスや体内で発生した異常細胞をいち早く感知して、排除する免疫反応のこと。好中球、樹状細胞、マクロファージ、NK(ナチュラル・キラー)細胞などがこれを担っている。さまざまな病原体に対して幅広く対応する自然免疫に対し、「液性免疫(抗体の免疫)」や「細胞性免疫」など、病原体を記憶して再侵入したときに直ちに働く免疫反応を「獲得免疫」と呼ぶ。

残念ながら、またパンデミックは繰り返すのだろう。しかも短い周期でやってくるかもしれない。そのときにはもう一度、手に取りたい本だ。考えさせられた内容について幾つか触れてみたい。

私は受託研究をするときに、「結果が出なかったら正直に言いますよ。それでいいのなら受けますが、いいんですか」と聞きます。それで企業側は「お願いします」と言う。いざ実験すると、いい結果が出ないこともあるわけです。「出ませんでした」と言うと企業側は、「いや、なんとかなりませんか」と言ってくる。そのやり取りが永遠に続くのです。

宮沢氏も動物のワクチン会社から研究費ももらっているそうである。当然のことなのかもしれない。国は緊縮財政でカネをださない。企業からもカネをもらわないとしたら、少なくとも数十億程度の資産家でもないと研究者として生きていけないことになる。企業に都合の良い研究者ばかりのなかで生き残っている宮沢氏は、やはり飛び抜けた研究者ということなのだろう。そんな宮沢氏でも次のように語る。

いろいろと戦うのですが、過去には負けてしまい、しかも自分自身が経理で不正(正確には不適切経理)があったとされて研究費停止処分も受けている。私は不正に対しては戦うことが正義だと思っていたわけです。ですが、正義を振りかざすと、とんでもないことが起こるということを学びました。 (…中略…) ただ、正義感を振りかざされると迷惑に思う人がいるのは事実でしょう。あとは悪を恨む心が、逆に自分に作用するのかもしれません。あまり憤らないほうがよいのでしょう。心の健康のためにも。

これは正義感などというものとは違うように思うのだ。間違っているものに間違っていると言えない、宮沢氏ほどの研究者でもとんでもないことになってしまう。私にはどうしてもこの社会が間違っているように思えてならないのだ。少なくともこれでは競争に勝てない。鳥集氏は次のようにも語る。

このコロナ騒ぎは、全体主義と戦っているんだと私は思っています。

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Photo by Patrick Weissenberger via Unsplash

私は、庶民から国の指導層まで、誰も全体主義と戦う気概どころか、どんな理不尽な要求にも戦う気力さえ失っていることが問題なのだと思う。しかも、さらに残念なことには「コロナワクチン失敗の本質」という名前のこの本で、なぜか「財政的なツケ」などという問題に触れ、地上波TVで垂れ流される「子や孫にツケを残すな」というプロパガンダそのものの展開となるのだ。本当に市場にお金がジャブジャブに流れていると思っているのか。ならばなぜ研究費がないのだ。緊縮財政で必要なお金を絞り、増税で市場からお金を回収してきて経済を停滞させているから、こんな状況なのではないのか。これほどの才能に恵まれた人たちが、本当に安倍政権は緊縮財政ではなかったと思っているのだろうか。

お金が回っているのは、別の記事『“モリカケ”よりも面白い「追跡 税金のゆくえ」を読んで考える』でも触れた、オリンピックや、コロナ対策費で、一般社団法人を通した極めて不透明なカネ。それに、必ず儲かるコトにしか投資をしない倫理なき企業のカネくらいなのではないか。そんな倫理なき企業のカネが研究者を歪めている。この本はそんな本ではなかったのか。なぜ真逆に展開されるのか。これほど素晴らしい本でも、こんな内容を盛り込まなければならないことに改めて危機を感じる。

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