ホーム 『知ってはいけない―隠された日本支配の構造』を読んで考える

amazonで書籍詳細表示

「知ってはいけない」を読んで考える

書籍名 : 知ってはいけない―隠された日本支配の構造
著作者 : 矢部 宏治
出版社 : 講談社現代新書
発売日 : 2017/8
ISBN : 9784062884396

百田新党(仮)で「密約と政治」考える (2023/09/18)

2023年9月13日に「百田新党(仮)」の百田氏は、党の正式名称を「日本保守党」と発表した。この「百田新党(仮)」は、「LGBT理解増進法」が可決された場合という条件付き新党立上げ決意表明が、2023年6月10日に行われたことに端を発したものだ。LGBT自体に反対という人は少ないのかもしれない。しかし、この「LGBT理解増進法」は極めて異例な成立過程を経た、前例のないものとなった。なぜこのようなことになったのか。駐日アメリカ合衆国大使のエマニュエル氏からの指摘があったことが原因だったのだろうか。ならば、ということで、米国による日本支配の構造を、公文書から読み解いた本「知ってはいけない ― 隠された日本支配の構造/著:矢部 宏治」をもう一度、読んだ。この本は少し古い本だ。既に続編も出ている。しかし、基本的な部分をもう一度確認したいと思い、2017年に出版されたこの本を読んだ。

Osprey Supports Afghan, Coalition Forces in Afghanistan

Osprey Supports Afghan, Coalition Forces in Afghanistan via Openverse

YouTubeなど、情報発信のためのツールが普及したことにより、かつては「陰謀論」で片づけられていた「日米合同委員会」や「横田空域」などに関する情報が増え、徐々にマスメディアでも取り上げられるようになった。今では情報に無関心な庶民を除けば「陰謀論」で片づける人の方が少ないのではないだろうか。

それでも、この本の中心的なテーマである「密約」は、やはり「陰謀論」と扱われてしまうことが多いように思う。公文書を提示されても、にわかには信じられないというよりも、余りにも表向きの現実と離れすぎていて、理解できない、または理解の限界を超えていると感じるように思う。

この本で、著者の矢部氏は様々な実例と、裏付けとなる公文書を提示し「密約」の存在と、オモテとウラとその構造を教えてくれるのだが、まず「日米合同委員会」がやはり、にわかには信じがたい。

この日米合同委員会でもっともおかしなことは、本会議と三〇以上の分科会の、日本側メンバーがすべて各省のエリート官僚であるのに対し、アメリカ側メンバーは、たった一人をのぞいて全員が軍人だということです。アメリカ側で、たった一人だけ軍人でない人物というのは、アメリカ大使館の公使、つまり外交官なのですが、おもしろいことにその公使が、日米合同委員会という組織について、激しく批判している例が過去に何度もあるのです。有名なのは、沖縄返還交渉を担当したスナイダーという駐日首席公使ですが、彼は、米軍の軍人たちが日本の官僚と直接協議して指示を与えるという、日米合同委員会のありかたは、「きわめて異常なものです」と上司の駐日大使に報告しています。

にわかには信じがたいことではあるが、第二次世界大戦では、巨額の賠償金が課せられなかったことを考えると、実はその代わりとなる何かが隠されていたとしても不思議ではないとは思う。

また、今では「陰謀論」と言われることも少なくなった「横田空域」について、本「知ってはいけない」の冒頭で取り扱うことを、著者の矢部氏は次のように記す。

なぜならそれは、数十万人程度の人たちが知っていればそれでいい、という問題ではない。少なくとも数千万単位の日本人が、常識として知っていなければならないことだと思うからです。

black and gray tomb stone

Photo by Ann via Unsplash

同様のことを『日米戦争を策謀したのは誰だ!』などの著書を持ち、ディープステートの研究で有名な林千勝氏もインターネット動画で言っているが、私はこの考え方に懐疑的であった。なぜならば数千万人の庶民が事実を知ったところでどうなるのであろうか。庶民だけではなく、ほぼ全ての日本人は、映画のようにマトリックスに繋がれていたいのだ。知識人と云われるような人でさえ、マトリックスに繋がれた状態で自由であるかのように振る舞おうとする。好条件で繋がっていることを誇りにさえ思っていたりする。

それでも、この本「知ってはいけない」にあるイラクについての記述は考えさせられる。あれほど徹底的に叩かれたイラクが、日本とは違い、全土に「米軍を配備する権利」は認めていないというのだ。

戦争で一方的にボロ負けしたあと、崩壊した国家のなかでそうした「主権国家としての正論」をアメリカに堂々とぶつけ、しかも了承させたイラクの外交官たちに大きな拍手を送りたいと思います。しかし同時に私たち日本人は、深く反省もしなければなりません。こうしたイラクの地位協定を読むと、私自身も以前はあまり抵抗がなかった、「憲法9条にノーベル平和賞を」などという耳触りのいい主張が、いかに現実からかけ離れたものであるかが一瞬で理解できるからです。なにしろ、その憲法9条のもとで私たち日本人は、世界一戦争をよくする米軍に対して、「国内に自由に基地を置く権利」と、「そこから飛びたって、自由に国境を越えて他国を攻撃する権利」を両方与えてしまっているのですから。

この本には、民主党鳩山政権の「最低でも県外」という発言と「密約」に関する記載もある。今後、どんな新党が出てきても、やはり「密約」の壁にぶち当たるように思う。「百田新党(仮)」はどう乗り切るのだろうか。他にも「参政党」などタブーに触れる政党もあるが、何か進展を創ることはできるのだろうか。私たち庶民には何ができるのだろうか。イラクを始めとする、腹黒い世界の戦争を生き抜いてきた国々の狡猾な交渉力と、そんな人材を生み出す社会となることが、求められているような気がしてならない。

トップへ戻る