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アメリカの警告―軍事・経済一極支配と100年デフレ

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「アメリカの警告―軍事・経済一極支配と100年デフレ」を読んで考える

書籍名 : アメリカの警告―軍事・経済一極支配と100年デフレ
著作者 : 長谷川 慶太郎
出版社 : 東洋経済新報社
発売日 : 2002/10/17
ISBN : 9784492442937

一極支配による平和 (2013/11/11)

この「アメリカの警告―軍事・経済一極支配と100年デフレ」は、2002年に出版された本である。

私は、日本で一体何が起きているのか、ずっと考えてきた。「デフレ」はその謎を解く、ひとつの重要な鍵ではないかと思っている。そして少し時代を遡ってみた。まだあまりデフレが強く意識されていなかった10年前に「デフレ」について書かかれた本を読んだ。この本はその一冊である。

戦争がないということは、経済的には「デフレ」という経済の基調をもたらすことになる。逆に言えば、20世紀の経済基調であった「インフレ」は、「戦争の落とし子」なのである。なぜ戦争がインフレを引き起こすかと言えば、戦争は国内資源を最大限に生かそうとするからである。

アメリカの一極支配による平和が「インフレ」に終わりを告げ、「デフレ」の時代になるということがこの本の主旨のようであるが、第1次世界大戦後の世界恐慌は、強烈な「デフレ」であったわけだが、あれは「インフレ」の落とし子ということなのだろうか。私のような無学な者には解らない。また、平和であると国際化が進み、デフレになるとのことであるが、国際化はデフレのひとつの要因であることは間違いないが、明らかに全てではない。

このアメリカの一極支配による「デフレ」を基本的な考えとし、様々な事柄、各地域の問題について書かれているが、細かなことを、当たったかどうか検証するのは反則というものだろう。基本的な考え方のみについて考えていきたい。ただ、細かなことについて、一言触れるのであれば、やはり、10年という月日は、予想が困難というより、概念を変えざるを得ないもののようだ。

「デフレ」というテーマに沿って書かれた部分を見てゆくと、中国で日本の化粧品が良く売れているとした上で、

安ければ売れる。それはたしかにインフレ時代の商法の基本であった。だが、デフレ時代においては、安いだけでは商品の販売競争力を刺激しない。

と綴られるている。まず、中国で最も売れているのは欧米の化粧品であるのだが、中国をデフレという人はいないだろう。さすがに読み進めて良いものかと心配になった。

また、別の頁では、

デフレ時代においては、徹底した「超価格破壊」が進行する中で存立を維持しようとするならば、国家も企業も絶対に「技術の研究開発」に全力を挙げて取り組む以外に選択の余地がない。

本当にデフレを理解していらっしゃるのかとさえ思う。投資するよりも、現金を持っているべきであるのがデフレだ。敢えて製造業の企業がやることがあるとすれば、1銭でも安く働く奴隷労働者を捜す果てしない旅にでることだ。現在は中国が終わり、東南アジアに進出しているようだが、同時期に南米への旅をした後は、アフリカへの永い旅を続けることになる。

次第に広く認識され始めているとはいえ、まだ日本では政界でも言論界でも、「デフレは金融政策の産物」とする意見の持ち主が圧倒的に多数である。

という前書きで始まる本であるが、これは単なる私の個人的な感想に過ぎないが、何らかの意図を持ってデフレを創り出そうとする力が、10年前から働いていたような気がしてならないのである。きっと経済評論家の長谷川慶太郎氏は、その力を読み取ってこの本を書かれたのだろう、と私は、思う。

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