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30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由

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「30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由」を読んで考える

書籍名 : 30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由
著作者 : 杉本 宏之
出版社 : ダイヤモンド社
発売日 : 2014/07
ISBN : 9784478027349

チケットさえ持っていない。でも、小さなステージで今日も戦う。 (2015/03/05)

この本はマンション開発会社を立ち上げ、28歳で上場させた杉本宏之氏が自らの体験を記したものだ。本のタイトル通り、その後の倒産、再起までが綴られている。

まず私が感じたこと、それは「羨ましい」だったように思う。

パーティーの音楽が、いつか止むことはわかっている。そして、止んだ瞬間に踊っているものに待ち受ける運命も。しかし、音楽が鳴っている間は、我々はただ踊るしかないのだ

と杉本氏は記すが、ほぼ全てといって良いだろう普通の人びとは踊るためのチケットさえ持っていない。

また、先輩経営者たち数人と、プライベートジェット機を貸りてマカオに行ったこともある。数日間、飲んで打ってを繰り返した。普通に考えれば「億単位の金が消えた」エピソードを想像する。ところが、同行した経営者たちが持っている「強運」は常識を越えた強さだったのだろう。みんなカジノで大勝して帰ってきた

極めて少なくはあるが、私の経験からしても、億単位で稼ぐ人は極めて稀な「強運」をもっている。あまりにも小さなことではあるが、自らの低調な人生でさえも、うまく行くときは、「強運」がやってきて全てうまく行ったりする。同じことをしていても全くうまく行かないときもある。そして、そんなときは全てがダメなのだ。残念ながらその根底に流れるであろう原因は今もわからない。

起業がブームのようにもてはやされた2000年代半ば、多くの人が、大きな山の麓から山頂を見上げるように、成功した起業家の振る舞いを見ていたように思う。その頃の山頂の香りを、ほんの少しではあるが嗅ぐことはできる、興味本位だとしても面白い本だ。

特別なステージで踊る選ばれた人々のなかでも杉本氏の放つ特別な輝き、それは「逃げない」ことや「不屈の闘志」のようなものを源流としている気がする。過酷な状況下では、普通の人は単純に鬱になったりする。そんな打たれ弱い人びとも、皆その人なりの戦いをしている。間違いなく勇気はもらえるように思う。

また杉本氏は、

本を読んで得られる知識は、まだ血が通わぬ偶像でしかない

と書き、現実から得られる体験の重要性を説いている。著者が偶像と例えるように、この本も、本当に起きたことの極々表面的なことしか見せてくれないのだろうが、起業ブームともいわれた時代の先頭を走った杉本氏の道や振る舞いを見て、自らの道や在り方を再確認する、杉本氏とは違う自らの道や在り方を再確認する、それが、私がこの本から得た知恵だと思う。

どうやら、特別なステージで踊るチケットを持っていない私は、鬱陶しい日常と格闘しながら、杉本氏とは違う恐ろしく小さなステージで今日も戦いを続けて行く。

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