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電通の正体―マスコミ最大のタブー

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「電通の正体―マスコミ最大のタブー」を読んで考える

書籍名 : 電通の正体―マスコミ最大のタブー (増補版)
著作者 : 『週刊金曜日』取材班
発売日 : 2006/09
ISBN : 9784906605187

「モリカケ問題」に驚く (2017/11/07)

この本は古い本である。

なぜ今この本をもう一度手に取ってみようと考えたのか。それは、今年2017年におけるマスメディアの荒廃ぶりに驚き、その原因を考えてみたいと思ったからだ。マスメディアのなかでも、特にテレビは、法律で規定されている事業であり「モリカケ問題」などと揶揄される一連の極端に偏った報道は有り得ないはずである。この思いは私一人の勘違いでは決してない。百田尚樹氏が代表を務める“視聴者の会”では、記事『テレビは加計問題「閉会中」審査をどう報じたか?消えた参考人問題』で、私が感じていた異常性を数値として検証している。これらの背景には一体、何があるのだろうか。

この本「電通の正体-マスコミ最大のタブー」には、テレビ業界における電通の強すぎる影響力が書いてある。テレビ業界で起きていることを考えるにあたり、まず電通について学んでみることは間違いのないことであろう。しかし、今また読み直して思うことは「風景が変わったのではないか」ということである。

一方、自民党と電通の関係だが、実は美濃部亮吉と秦野章の争いとなった一九七一年の東京都知事選挙で本格的に始まると言われる。

この記述にあるように、この本にある電通は自民党と共に歩んできた。かつては、自民党との関係が強かった電通に何があったのか。2017年のイビツな社会の風景は戦後、戦勝国によってもたらされたものだと思っていた。しかし、書かれて10年が経つこの本をもう一度手に取ってみると10年前にはまるっきり違う景色があったではないか。確かにこの本には、電通が正義感に溢れ、社会貢献に積極的な企業であるとは書いていない。しかし、この本に書いてある倫理的な問題は、電通に限ったことではない。テレビ草創期の日本テレビと東京放送の競争を綴る一文に次のようにある。

ただしそこには、経済至上主義以外の遺伝子は、存在しない。競争は売上高のみを目標とし、そのために現代に引き起こされている幼児・青少年を含む社会への悪影響は眼中になく、存在もしない。テレビの発生と、そこから帰結される果たすべき役割の中に、社会への責任は組み込まれていなかった。

こんなことは、たぶん世界中の国々に共通した問題だろう。ただ、貧乏人でさえ、判断の基準がカネしかなくなった薄っぺらな日本人には残念過ぎる気がしてならない。儲かれば良いと、まるで正義の道を貫くかの如く日本人は中国にせっせと工場や技術を移転する。中国は日本に整えてもらった資源で稼ぎ、日本に向けた核爆弾を大量に保有する。そして日本の領土を侵食してくる。嘆いても嘆ききれない事態だと思うのだが。

本を書いた方々の問題意識も反映されているのだろう、この本「電通の正体-マスコミ最大のタブー」では、社会的な問題を告発する内容が多い。近年のカネを中心に考える人々にとっては、単に電通は様々な手法に長けた極めて強い会社だと書いてあるとしか感じられないかもしれない。2017年のイビツなメディアのカタチとは無関係にさえ思える。

(電通OBの声として)「電通の最大の強みは人的ネットワーク。一人ひとりがそれぞれの人脈をもっていて、いざという時、それを最大限、利用する。このようなネットワークは他の代理店が今からつくろうとしても無理です。結局、このまま電通の天下は続くんでしょうね」

しかし、私は気になる内容を見つけた。

(朝日新聞の幹部OBの声として)「『朝日新聞』は、最後までサラ金広告の掲載を拒否していた。しかし、当時の広告局長だった久野三郎などが、解禁を推進したんです。その時の電通側の人物が、成田豊だった。二人は、ともに東大野球部の出身ということで、非常に親しかった。また、当時の電通副社長が、『朝日』の副社長のところに来て、『解禁反対者をなんとかしてくれ』と要請したという。そのためか『朝日』の部長会で解禁に反対した者は、大阪や事業開発部に出された。電通は『朝日』の人事にまで介入してくると感じた」

私の記憶では、かつてはこの本にある消費者金融だけでなく、パチンコなどのグレーな業界のCMが世に溢れることはなかった。テレビが以前と同じビジネスモデルで、以前のように稼ぐことができなくなった現在において、多くの広告費を流し込んでくれるグレーな業界が有難いのは間違いのないことだろう。カネ・カネ・カネと突き進んできた結果、もしかするとテレビ業界は何か、庶民の感覚とは違う勢力の影響から抜け出せなくなる、云ってみれば自家中毒のようなことになっていないか。テレビ業界に極めて強い影響力をもつ電通は、当たり前のことであるが、広告主があっての電通だ。グレーな広告主のカネにどっぷり浸かれば、以前とは違うカタチにならざるを得ない。

この本は、本の終盤を次のように締めくくる。

テレビは、ジャーナリズムの基本であるWATCH DOG、反権力を取り入れなければならない。日本人はそうなって、初めて自分たちに何が必要だったかをテレビから知る。

もともと不思議な素地のあったところに、大きな地殻変動があったのだろうか。

あの戦争に大敗し、戦勝国がデザインした極めていびつな人口国家となった日本。本当の意味での反省に手も付けないまま、新たな問題に直面しているということなのか。

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