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いま沖縄で起きている大変なこと

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「いま沖縄で起きている大変なこと―中国による「沖縄のクリミア化」が始まる」を読んで考える

書籍名 : いま沖縄で起きている大変なこと
著作者 : 惠 隆之介
出版社 : PHP研究所
発売日 : 2014/9
ISBN : 9784569820323

次はすこし考えないかと言いたくなる (2017/10/31)

近年、動画配信サイトが飛躍的に普及したおかげで、沖縄の左翼活動家の信じ難い行動を多くの人が見られるようになった。この本「いま沖縄で起きている大変なこと」には、そんな実態も記されてはあるが、それよりも、その背景、更には沖縄の歴史に多くのページが割かれている。なんであんなことがあり得るのかという、今まであまり沖縄について考えてこなかった私の疑問にも、答えとなるものを用意してくれている。

日本人は「日本固有の領土」などという言葉が好きなようであるが、かつて沖縄には、琉球王国という国が存在していて、日本だけでなく、明や、清などとも外交関係を持っていたことは間違いのないことだ。本土の人々と共通点は多いとしても、私のように東京近郊に住む人間には理解できていない部分は多い。

那覇市内に「久米(クニンダー)」と呼ばれる地域がある。いまでこそ那覇と陸続きになっているが、18世紀ごろまでは「浮島」と呼ばれる島であった。その久米は、「三十六姓」と呼ばれる中国帰化人の子孫たちの居住区として、一種の租界を形成していたといえる。そして琉球は、この久米の中国帰化人子孫たちによって、間接支配されてきたのである。ここでは19世紀になっても中国語が話されており、彼らは日清戦争の終了まで、沖縄を中国圏に留めようと画策していた。そして現在も県民の3000人以上が彼らの子孫を自認しており、約10億円の共有預金と会館を有し、いまなお団結は強い。

「久米三十六姓(くめさんじゅうろくせい)」という福建省にルーツを持つ、中国と近い関係にある人々が、政治、行政に大きな影響力を持っているなどということは全く考えてもみなかったことである。

知事選に当たっては、稲嶺氏は中国帰化人「毛家」の子孫であることを、仲井眞氏は「蔡家」の子孫であることを、リーフレットで誇っていた。

こう記されたように、沖縄特有の歴史も大昔のことと片づけてしまえるものではなく、今現在も大きな影響を残しているようだ。この本で記された琉球王国の支配者層による、大国間をコウモリのように行き来する外交の歴史を読むと、韓国の支配者層である両班を連想してしまうが、やはりこれが大国に挟まれた小国の生き残りかたなのであろう。まぎれもなく両地域とも歴史から消滅することなく、問題を抱えてはいても繁栄を謳歌している。

okinawa

photo : Pixabay

ならば、沖縄のことを東京でいろいろ考えることはないのではないかと思ってしまう。でも、たぶん最大の問題はここにあるのではないだろうか。決して歴史は、どこかで止まったりはしていないのだ。1945年を境に、世界は善意で満ち溢れたわけではない。日本が冷戦下の均衡状態で、経済的繁栄を味わい、油断しきっている間にも、大国の野心は活発な活動を続け、その最先端のひとつが、沖縄であることは間違いないことだ。在日米軍基地の74%ではないが、22.4%が沖縄にある。これは沖縄が、地理的に東京より遥かに外交的な問題に晒される機会が多いことによるものであることは大きいだろう。そして、実際に既に顕在化している多くの問題が存在する。沖縄で起きている問題は、否応なく日本全体が共有しているものであろう。

しかも、沖縄に投下されている年間3000億円以上もの補助金の一部は、あろうことか中国共産党や左翼勢力に流出しているのだ。

著者の惠氏が、まえがきからいきなり記した驚愕の実態を見ると、日本全体が共有する問題というよりも、最大の問題は東京にあるのではないかと考えてしまう。沖縄や東京だけでなく日本全体をとんでもない苦しみに導いた70年前を繰り返す気なのかと思ってしまう。日本人はすぐに反省というが、日本人の一番苦手なことこそが、本当の意味での「反省」なのではないかとさえ思う。

沖縄県民は学校で「集団自決は軍命によるもの」「沖縄戦の本当の敵は日本軍だった」という教育を受けてきた。しかし、沖縄戦における県民の自決は、過去の二つの事件が原因であったというのが真相である。それは通州事件と尼港事件である。

著者惠氏のこの指摘を読み、私はいつも思うのではあるが、残念なことに日本人は考えが極端から、極端に動きやすい。この本が書かれた2014年より遥かに緊張感に満ち溢れていたであろう戦前、20世紀前半の日本人も、近隣の「善良なる諸国民」の存在を信じていたのではないだろうか。ところが通州事件や、尼港事件の信じがたい世界標準の残虐な現実を突きつけられ一気に怒りが爆発する。拝金主義の大手メディアが、自らの儲けのために戦争を煽り始める。今、通州事件や尼港事件を知らない日本人が多い、そして敢えて隠そうとする空気さえあるように感じる。日本人は本当の意味での「反省」をすることさえない国民なのではないかと思ってしまう。

この本「いま沖縄で起きている大変なこと」では中国による侵略の危機ばかりが綴られているが、勿論、米国が全て正しいわけもなく、親米こそが日本の外交政策の全てのわけもない。しかし、この本に記されている沖縄の米国統治時代の実態を見ると、米国は沖縄を真剣に米国本土並みに扱っていて、事実、平均寿命は飛躍的に伸びている。米国は多くの側面を持っており、素晴らしい側面も多いとは思う。今、問題が、日本人自身の選択にあるのことは間違いがない。

副題にある「沖縄のクリミア化」とは武力を使わない侵略のことのようだが、これはすでに東京をはじめ日本全国が直面している問題ではないだろうか。なぜか国民の大多数は、既に竹島や尖閣で国土を侵略されていても「戦争など起きるわけがない」という。でも、それは何度も何度も繰り返してきた、かつてと同じ道ではないのか。降ってきた米国式民主主義の下、庶民の考えが、良くも悪くも、より国を動かし易くなったように感じる。次はすこし考えないかと言いたくなる。最も過酷な現実に直面しなければならないのは多くの庶民であるのだから。

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