ホーム 一体、メディアは何に忖度するのか。
電通 洗脳広告代理店

amazonで書籍詳細表示

「洗脳広告代理店 電通―ドクター苫米地の脱「メディア洗脳」宣言」を読んで考える

書籍名 : 洗脳広告代理店 電通
著作者 : 苫米地 英人【著】
出版社 : サイゾー
発売日 : 2012/02
ISBN : 9784904209196

一体、メディアは何に忖度するのか。 (2017/12/04)

2017年、マスメディアは異様なまでの醜態を晒してしまったと感じた。だから、メディアに極めて強い影響力を持つ広告代理店「電通」について、もう一度、考えてみようと思い、本を何冊か読んでみた。この本はその中の一冊だ。

この本『 洗脳広告代理店 電通 ― ドクター苫米地の脱「メディア洗脳」宣言 』は有名な脳機能学者の苫米地英人氏が書いた本らしく「洗脳」を軸にメディアの危険性について書かれている。特に戦後、GHQが行ってきた「洗脳」、「洗脳」のツールとしてのメディア、そのメディアを支配してきた電通の歴史や、強さなどが中心に書かれている。更に、テレビの危険性、実際に為政者がメディアを世論操作に使ったことが疑われる例、そして洗脳から逃れるための術といった内容にまで記述が及ぶ。

television retro classic old antique vintage

photo : Pixabay

メディア、特にテレビの洗脳からの防衛策については、個人的にはあまり興味がない。この本が書かれた2012年よりも、今は更にインターネット動画などが発達し、テレビは極力見ないということが、正しい答えになりつつあるように思う。仮にテレビを見るにしても、必要最小限に留めることが重要であるのではないだろうか。勿論、インターネットの世界においても様々な洗脳の影響力から逃れることはできないのであろう。必要なことは、メディアが洗脳の道具となりうるという構造を理解するではないだろうか。

電通は、1901年に従軍記者をしていた光永星郎が設立した。この本『 洗脳広告代理店 電通 』では、軍や国家と密接に関係してきた電通の歴史、特に戦後、GHQとの関係についての記述に多くの頁が割かれている。

この時期に、スタンフォード大学のアーネスト・ヒルガード教授が「戦後日本の教育の非軍事化のため」にGHQに呼ばれて来日している。彼はアメリカを代表する催眠・洗脳のスペシャリストだ。このタイミングで呼ばれているということは、GHQが洗脳プログラムの作成を彼に依頼したと考えるのが自然であろう。少なくとも、GHQが「戦後日本の教育の非軍事化のため」に彼の専門分野である洗脳を利用したことは明らかだ。

さまざまなメディアが普及した2017年においては、「陰謀論」として聞き飽きた感もある記述も多いが、このように幾つかの脳科学者の視点としての状況証拠も示してくれている。そして、状況証拠を積み上げ、博士流の分析が示される。

2017年のメディアの暴走について考える意味で面白い記述がある。

これは、ミシェル・フーコーが『監獄の誕生―監視と処罰』という本で指摘した「パノプティコン(Panopticon)」が働いたということになる。このような力を「バイオパワー(生権力:bio-power)」と呼んでいる。「バイオパワー」とは、「監視されているという暗黙のプレッシャーによって、実際には監視されていなくても監視されているかのように振る舞うこと」を言う。監獄の囚人に「監視されている」というプレッシャーを与えておくと、実際には監視されているか否かにかかわらず、監視されているときのような模範的な行動をとるという。

2017年に流行った「忖度」も広い意味でこの「バイオパワー」の一種ではないかと思う。そう考えると、今、メディアは一体、何に忖度しているのか。メディアは何かに監視されているということなのだろうか。

私のような庶民には考えも及ばなかった事実も示してくれている。

実は、銀行のシステムは当時からIBMのCOBOL(コボル)という言語でしか動かしてはいけないことになっていた。将来のオンライン化を見据えてプログラム言語を統一化していたのだと思うが、なぜIBMなのかはわからない。和製のソフトが信用されていなかったのかもしれないが、とにかく大蔵省のきついお達しで、銀行はIBMのCOBOLを使うと決められていた。

COBOLという言語が中心的に使われていたのは、たぶん20年くらい前までなのだろう。当時は、一般的な業務システムはCOBOLで、技術系のシステムはFORTLANというのが当たり前だと考えるくらいで、その裏で何かが起こっていたかなどとは全く考えも及ばなかった。

この本ではFacebook、Twitterについての言及もあるが、私はずっとYouTubeについて不思議に感じていたことがある。今では動画サイトといえばYouTubeが当たり前になっているが、そもそも、この背景にはadobeの技術があり、一定の知識があれば誰でもサービスの提供ができ、当初は多数の同様なサービスが存在した。その中でなぜYouTubeが選ばれたのか、単純に競争に勝ったというだけではないのではないかということは、ずっと考えてきた。まぁ、私のようなものには検証といっても極めて限定的な術しかないのではあるが。

私のような庶民が、洗脳から完全に逃れることはできないのであろう。しかし、メディアは洗脳のツールとして使われ易いということを理解するだけでも、事前に被害を防げるように思う。その意味でも、苫米地氏の本はありがたいのだろう。

この本『 洗脳広告代理店 電通 』の終盤に次の記述がある。

一人の力は小さくても、束になれば国をも動かす。それは中東の革命で証明済みだ。小さな力を束にすれば、やがては電通のような大きな権力者にも勝てるはずだ。

さすがにこれは残念な記述だと思う。この「中東の革命」は、一般庶民を更に過酷な環境に叩き落とすこととなったのであり、この「中東の革命」こそ、情報機関の関与が囁かれているのではないだろうか。不満を煽られた庶民が、ジーンシャープ氏によって書かれた活動家のための手引書により権力に立ち向かうのではあるが、結局、これら一連の出来事により更なる不幸が一般の庶民にもたらされたのであるから。

この本が書かれた2012年においては、権力はアメリカであり自民党で、その背後にメディアがあるという構図に、まだ説得力があったのかもしれない。でも、今、日本で起きていることは随分と景色が変わったように思えてならない。権力と共に歩んできた筈のメディアは、目を疑うばかりの反権力に舵を切り、この本に書かれたことを当てはめてみるのであれば、メディア自体が何らかの「バイオ・パワー」に縛られ、忖度をし続けているとしか思えない。

さまざまな視点を示してくれる苫米地氏の本は有難いことに間違いはないが、苫米地氏ほどの脳機能学者には、ぜひ、テレビや新聞に興味がなくなる手引書を作ってもらいたいと感じてならない。

トップへ戻る