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「世界を操る支配者の正体」を読んで考える

書籍名 : 世界を操る支配者の正体
著作者 : 馬渕 睦夫
出版社 : 講談社
発売日 : 2014/10
ISBN : 9784062191753

民主化とは何だったのか (2020/01/07)

外務省に勤務し、世界各地で活躍した元大使によるこの本「世界を操る支配者の正体」では、イギリスの地政学者ハルフォード・マッキンダーの言葉を借りて、地政学的要所であるロシアを支配し、世界制覇を目論む勢力があるという。

20世紀の初めに活躍したこの地政学の泰斗は、「東欧を支配するものがハートランドを制し、ハートランドを支配するものが世界本島(ユーラシア大陸)を制し、世界本島を支配するものが世界を制する」と喝破しました。このハートランドの核をなすのがロシアとウクライナなのです。

ウクライナ

Elias SchäferによるPixabayからの画像

その上で、元大使の著者、馬渕氏は、その紛争が、世界最終戦争に繋がる可能性さえあると指摘する。この本「世界を操る支配者の正体」は、ウクライナ危機を入口として、世界の「金融」を操る資本家が推進するグローバリズム、それらを支持するグローバリストと対立するナショナリストという構図を軸に、この世界の一つの側面又は、一つの世界観を、私たち一般人にも示してくれていると私は感じている。

国際金融資本家と言うと、「陰謀論だ」という声が一斉に、聞こえてきそうな気がするが、存在することは間違いない。というよりも存在しないといえば、例えば「東京タワー」は存在しないといった、当たり前のことに疑問を投げつける、逆に何の陰謀論なんだという話になる。問題は、国際金融資本家たちが、世界にどんな影響を与えているかということだろう。ウクライナでの2004年のオレンジ革命を始めとした、東欧のカラー革命にジョージ・ソロスの財団の関与があったことは様々な資料に見ることができる。そして、東欧だけでなく、アラブの春などと呼ばれた多くの「革命」が、決して人々を幸せにしなかったことも、この文章を書いている2019年には、事実としてわかっている。それらの「革命」には、それぞれの事情があるのだろう、しかし、どの「革命」も一貫して、扇動的な力が働いたことが指摘されている。馬渕氏は、本来はウクライナでは「革命」などは考えにくいとも指摘する。現在も東部地区で戦闘状態となっているウクライナに住む人々の民族性について、次のように記す。

ウクライナ人は民度の高い穏健な人たちです。中でも文化に対する高い関心と国民の文化水準の高さは、特筆すべき状況にあります。キエフ・オペラやキエフ・バレエ団は世界的な名声を得ています。

ロシア

OpenClipart-VectorsによるPixabayからの画像

元大使は、2004年のオレンジ革命のときに見られたウクライナ人の暴力的な行動などありえない、外国勢力の関与によるものだと結論せざるを得ないと続ける。小学校で松尾芭蕉を学ぶという、文化的に極めて広範囲な関心を持ち、高い水準にある人々が、貧困に喘ぎ苦しんでいる。この本が書かれた2014年よりも、更に状況は悪化、オリガルヒと呼ばれる一部の富豪、国際金融資本家に近い人々による経済的支配に至ると書かれた資料も見ることができる。これでも、多くの日本人は、ウクライナへの興味は薄い、遠く離れた地域のことなのだろう。

日本のメディアでは、一方的にロシアの責任のみを問う報道が多いが、私だけでなく疑問を感じる人もいるのではないだろうか。ロシアの文豪トルストイが、クリミア半島の先端、セバストーポリでの戦争を小説にしているように、ウクライナ東部に位置するクリミア半島は、元々ロシアだったのではなかったか。この本の中で元大使は、1954年に、当時ソ連のフルシチョフ首相が、クリミアの行政管轄をウクライナ社会主義共和国へ移管したことで、ウクライナの一部になったと教えてくれている。それを考えると、そもそもウクライナに親米政権を樹立する工作こそが問題なのではないかとさえ思う。

ゴールド

flaartによるPixabayからの画像

国際金融勢力はこの問題にどんな関係をしているのか。ここからが興味深い。ウクライナ東部のクリミアでの紛争は、200年前のナポレオン戦争の戦後処理を話し合ったウィーン会議から始まっているというのだ。その時のロスチャイルドとロシアとの戦いが現在も続くという。ネイサン・ロスチャイルドが、ナポレオン戦争終了間際の国債市場で、情報を操り巨万の富を築いたことは余りにも有名だが、この富により、英国をコントロールする力を持つに至り、ウィーン会議でも陰の主役となったという。「神聖同盟」を提唱するロシア皇帝アレクサンドル一世と、民間中央銀行による世界支配を目論む、ロスチャイルド家の対立から、現在の紛争へと続くというのだ。更にロスチャイルド家は、アメリカ南北戦争、ロシア革命までに、影響を与えるようになったという。そして、なぜ米レーガン大統領が暗殺未遂にあったのか、その理由ではないかとされる行動にまで言及する。

馬渕氏は、国際金融勢力の世界支配を、更に裏付けるように、「道徳と民族を破壊する4人の洗脳者」に挙げる、ジャック・アタリの言葉を引用し、独特の歴史観を示す。

「国家の歴史とは、債務とその危機の歴史である。歴史に登場する、さまざまな都市国家・帝国・共和国・独裁国家も、債務によって栄え、債務によって衰退してきた」とする彼の歴史観は正しいと思いますが、これを逆に言えば、「国家の歴史とは、国家に金を貸す者の歴史である。国家に金を貸す者が歴史を動かしてきた」という歴史観になるのです。

また、国際金融資本家に近い学者が主張する市場経済至上主義、新自由主義の問題点を示し、次のようにも記す。

シカゴ大学のハイエクやフリードマンの下で学んだ留学生の中には、現在日本国内の要職についている人々も少なくないでしょう。この留学生やその弟子たちが、現在の我が国の経済界、官界、政界、学界、言論界などに大きな影響を依然として及ぼしているのです。新自由主義が単に経済学の一流派であるのなら、特に心配することはないと思います。しかし、新自由主義の実態はそんなに生易しいものではありません。新自由主義経済学は人間のマインドを変革する毒を含んでいます。その意味で、新自由主義経済学は経済の領域を超えて、一種の政治学でもあり人間哲学でもあるのです。

ウクライナには民度の高い穏健な人たちが住んでいたというが、今は内戦状態だ。誰が何をしたのか。それが国際金融資本勢力によるものなのか、少なくとも私たち庶民には、「検証のしようは無い」ことであると思う。ただ個人的に思うこととして、この日本で、20年も長引くデフレ、世界ダントツ最下位の経済成長率。一部の破綻国家を除けば、間違いなく、突出して世界最下位である。本当にそこまで政府、官僚は無能なのか。その可能性もあることが残念ではあるが、馬渕元大使のこの本「世界を操る支配者の正体」を読むと確かに違う側面もあるのかもしれないと考えさせられる。これが世界なのかもしれないとも考えさせられる。子供のころ、それでも、日教組の気持ちの悪い先生方の異常さは察知していたが、それにしても、世界は、さらに別な場所にあることは間違いがないような気がしている。今、日本は平和ではあるが、不気味なくらいに。

現在の世界における主要なアクターは、ロシアと日本、そして国際金融勢力です。アメリカや中国といった国家ではないことに注目してください。

この本のまえがきにある一文だ。本を読み終え、元大使の教えに従い国際金融勢力を軸に考えると、なぜ日本では自らの国を破壊するような政策ばかりが進むのか、辻褄が合うような気がする。それでも、主要なアクターに日本が含まれているということは無いのではないかと考えてしまう。また、この本に書かれている様々な洗脳工作についても、多くの国民がお金中心の考え方になっているのと辻褄が合う気がしてならない。以前から、特に貧しい庶民が、まるで「マネー教」という新興宗教の信者にでもなっているかのような気がしていた。しかも、なぜか平和と唱えれば、平和が訪れる考える「マネー教」信者、しかし、本人たちは、自らを無宗教だという。シュールな光景が今、日本では広まっていないだろうか。「マネー教」信者だと宣言してくれれば、私にも理解しやすいのだが。私たち庶民には、元大使の教えは検証のしようがないだろう。それでも、みんなもう少し考えるべきではないだろうか。少なくとも「国際化」が正義であり、「国際化」と言われた途端に、思考停止に陥ることは止めないかと思う。

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